マッサージの快楽に溺れて抜け出せない

 

最近、肩こりと腰痛がつらい。あと背中も痛いし目もしぱしぱする。

これらの不調は全て日中のデスクワークが原因だ。

でも体が悲鳴をあげる中、私の心はどこかワクワクしている。

 

 

 

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というのも、近頃マッサージにハマっているのだ。

「60分2980円」みたいな街でよく見かけるやつ。

一度マッサージしてもらったら、その快感にすっかりハマってしまい、週1ペースで行っている。

もみほぐされて疲れを癒したいというよりも、もみほぐされたいから疲れたい、ぐらいの感じになりつつある。

だからいつもワクワクしながら腰痛肩こりを体にチャージしているのだ。

 

 

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特に金曜夜は完璧に体が仕上がっている。

この疲労で磨き上げたパーフェクトボディをマッサージされたらどんなに気持ちいいだろうか。考えるだけですでに心は揉みほぐされ始めている。ああ、気持ち良い。

 

 

 

とある日の金曜日

 

例外なくマッサージ店へ駆けこんだ金曜日の夜のことだ。

スピーディーに受付を済ませ、ベッドへ案内された。

勢いよくベッドに飛びこみたいところだが、ここにうつぶせになる瞬間はいつも緊張してしまう。

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ベッドの顔に当たる部分は穴が開いていて、そこにU字型クッションがセッティングしてある。

ここに顔面をハメるわけだが、このポジショニングをスマートに出来たことがない。美容室のシャンプー台に頭の位置を合わせるのも苦手だ。

ベッドのほうから顔面を迎えにきてほしい。


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どたばたしつつなんとかベッドの穴に顔面をフィットさせ、マッサージが始まるのを待つ

この数秒間、いま自分が面白げな顔になってるんじゃないかと不安になる。

だからなるべく無の表情を作って待ちたい。

 

 


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どのスタッフさんもマッサージが上手いので、特に指名をしないようにしている。

人によって得意なもみ方や、もみ進める順番、得意な部位が違うので、個性を色々と味わうのがおもしろいのだ。

 

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この日のスタッフさんは、揺らすタイプだった。

「お客さん終点ですよ」と酔っ払いを起こす時の揺らし具合と同じ感じ。


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最初は全身のリンパを流してから揉みほぐしに入るのかな? と思ったが、肩のマッサージに移行してからも揺らしのままだった。

不思議な動き……


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5分ぐらいして揺れに酔ってきた。これはなんだ。

もしかして60分ゆらしっぱなしコースを予約してしまったのかと不安になってきた。

 

 


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と思ったら、突然グーン! とコリを押されて声を上げそうになった。

なかなか指圧してくれない焦らしからのグーンで私は昇天した。

マッサージに焦りは禁物だ。こういうことがあるからやめられない。

そのあとも何度もグーンしてくれてそれはそれは気持ちが良かった。

 

 


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うつぶせから仰向けになり、仕上げは頭のマッサージ。

こめかみ、頭頂部をちょうど良い指圧で刺激されて気持ちいい。

 

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「では首を左に向けてください」

と言われ、夢うつつで首を傾けた。


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グーーン!

 


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「ここ、眼精疲労のツボなんですよ。

ちょっと目の奥がジーンとするかもしれませんが、しっかり効くので!」


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い、痛い痛い痛い!! ちょ…いた……あたたた!!!!!イタイ!!!

ちょ、ちょっとストッ…痛----い!!!

 


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あまりの痛さで目が飛び出そうだった。

絶対指めりこんでる。そのめりこんだ指の体積分、目玉が外に出てる、絶対。

衝撃で呼吸が止まる寸前だったが、スタッフさんに痛みを訴えようと必死に声を発した。


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「…ハハハッ イテッ ヒヒッヒヒヒ」

痛すぎて笑ってしまった。

「あ、痛いですよね~! でも大丈夫ですよ。その分、眼精疲労に効きますから!」

「ハヒ、ヒィ~ッヒッヒッヒ」

笑ったら和気あいあいになっちゃった。

めりこむ指、飛び出す目玉、主張にならない気味の悪い笑い声。

私はタオルの下で目玉が外れてないことを祈った。

 

「はい、じゃあ今度は右側を向いてください」

 


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ぐーーん!

 ッハーーー!!

 

 

目が疲れてるほど眼精疲労のツボは痛むらしい。

本当に息が止まるぐらい痛かった。

なんなら目を直接突かれたほうが痛くないかもしれない。

 

そうこうしているうちに終了のタイマーが鳴った。

終わった。なかなか刺激的な時間だった。

身支度を整えレジでお会計をしてもらう。

  


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「あれ? 来た時よりもだいぶ目がぱっちり開きましたね」

 


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鏡を見ると、目がめちゃくちゃ開いていた。 

え? すごくない? あのツボなんなの?

それとも指がめりこんだ分、本当に目玉がちょっと飛び出したのかもしれない。

 

 

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 またやってもらおう

 

 

 

 

 

 

omocoro.jp

以前、オモコロでもマッサージについて書いたので良かったらご覧ください。テキスト1000文字なのでつるっと読めます。