鍋のシメに何を入れればいいのか分からない。
お米なのか、麺なのか。どの鍋に何を入れてシメるのか。
私が鍋のシメ勘がないことに気づいたのは、あるラジオを聴いている最中だった。
【023】長島・加藤のイうてるマにイっちゃってる「VR買っちゃってる」 | オモコロ
ラジオでMCの長島さんと加藤さんが、お題となる鍋に最適なシメを「せーの」で言い合うやつをやっていた。
その内容を表にまとめてみるとこんな感じ。
お2人の意見はほとんど一致していて、とても盛り上がっていた。
私はその楽しげな会話を聴きながら、背筋に冷たいものが流れるような気がした。
分からない。いっこも分からなかった。
今まで気づいてなかったけど、私は鍋のシメに関する知識がぽっかり抜け落ちている。
例えば、カニすきは雑炊が正解らしい。
カニのうまみが存分に出たダシをお米に含ませる。これは分かる。絶対においしい雑炊ができるだろう。
ところが、(鳥の)水炊きには中華麺が正解だという。
中華麺で当たり前といった空気で進行しているラジオをよそに、私は1人ショックが隠せなかった。
同じダシ系なのに雑炊と中華麺のパターンが?! という驚きである。
「ダシを米に含ませる」という学びは水炊きには通用しないのだ。
あと、麺の種類ってうどんだけじゃないんですか?! という驚きもあった。
お米と麺の使い分けもままならないのに、麺の種類まで展開されてしまうともう何も分からない。
すきやきの場合は、満場一致でうどんとのことだ。
牛丼のノリでごはんもありなのかと思ったので意外だった。
でもこれでちょっと分かった気がする。
味が濃い鍋にはうどんが向いている。濃厚スープには太麺が合う。ラーメンでよく聞くやつだ。
ところがキムチ鍋、君は一体なんなんだ。
濃い味なのにお米もうどんも良いらしいじゃないか。チーズリゾットすごいおいしそう。
だめだ、思考回路が飛びそうだ。
鍋とシメは規則性があるようでない。ダシの種類、濃度、テイスト、何を基準にしてシメをあてがえば良いのか見当もつかない。
シメの選択にはいわゆるセンスが必要なのだろうか。経験や知識があれば自然と導きだせるのだろうか。
……ここまで書いて思い出した。
思い返すと、私が子供の頃に食べていた鍋は味がしなかった。
鍋に水をはり、昆布をひと切れ入れる。沸騰してきたら昆布を取り出し、野菜やお肉を入れ完成。
スープの味はまったくしない。ひと切れ入っていた昆布のダシはどこにも出ていない。あれは昆布じゃなくてゴム片だったのか。
そんな感じで、うまみも塩気もゼロのスープが出来上がる。人はそれをお湯と呼ぶ。
私たちはお湯と具材を取り皿によそってポン酢をかけて食べていた。ポン酢は味があっておいしかった。
最後のシメは決まってお米。味がないので、おかゆみたいだった。
嫌いじゃなかったけど、家庭ではこの鍋しか出たことがない。
外食でも鍋を食べることはなかったように思う。
何度か行ったしゃぶしゃぶは、うちの鍋と同じようにお湯に昆布がそよいでいたので、「鍋ってお湯だな~」という思いに拍車をかけた。
こうして私の脳は、鍋に関して知覚する部分だけ赤ちゃんのまま大人になってしまった。
だから私は鍋について何も知らない。
今後は色々な鍋と向き合い、鍋やシメのことを真剣に考え、成長していきたい。
ところで先日、自然薯専門店でお鍋を食べたんですが、
すごくおいしかった。
和風だしのスープでホルモンと野菜を煮込み、仕上げにネバネバの自然薯をかけた豪快な鍋。
本当においしかったけど、あれからずっと悩んでいる。
これの最適なシメってなんだったんだろう。
透明な和風だしはお米に含ませるべき……?
自然薯のねばねばを絡ませるなら麺を……?
その場合は細麺……太麺……?
鍋脳が赤ちゃんの私には無理難題だった。わからない。