今年の1月、初めて取材というものを経験した。
取材先は、東京都の離島「神津島」。
「東京の離島1ヶ月渡り歩きます会社」という東京別視点ガイドのトリッキーな企画のなかで、ひと記事書かせてもらえることになったのだ。
初取材で、しかも離島。初めて尽くしで貴重な経験ばかりだった。
今回はその時の思い出を少し綴ってみようと思う。
初めての小型プロペラ機
神津島へ行くには、飛行機だと45分、船だと12時間かかるらしい。
私はブランコでも酔ってしまうほど乗り物に弱い。12時間も船に乗ったらスライム状に溶けてしまうだろう。
ということでわがままを言って、行きは割高な飛行機を使わせて頂くことになった。
取材当日、朝早く調布飛行場へ。
調布飛行場は想像以上にこじんまりとしていて、びっくりした。
たぶん家の近所にあったジャスコと同じくらいの大きさだ。
この日は朝の冷え込みで滑走路が凍結してしまい、フライトが1時間ほど遅れるとのことだった。
そわそわして落ち着かない。ターミナル内でも散策しよう。
スタンバイ中の小型のプロペラ機。どうやらこれに乗って行くらしい。
今まで飛行機といえばジャンボジェット機しか乗ったことがない。一体どんな乗り心地なんだろう。
待合席からも滑走路が見える。いくつもプロペラ機が止まっている。神津島行きはどれだろうか。
ウロウロしながら、しつこい位に飛行機を見て過ごした。もう緊張しちゃって。
1時間後、待機していた飛行機が次々と飛び立っていった。
ああ、本当に飛ぶんだ。ドキドキする。
荷物検査を済ませると、いよいよ飛行機に搭乗する番になった。
ターミナルまで迎えに来てくれるジャンボジェット機と違って、こちらが滑走路を歩いて飛行機に乗り込むスタイルだ。
係員さんの後をストーカーの如くぴったりとついていった。
飛行機の前に乗客全員がそろったところで、係員さんから名前を呼ばれ、1人ずつ指定された席へ座る。図のように交互の配置になった。
機体の重量バランスをとる為、乗客の体重も計算に入れて配置しているらしい。
フライト中だけは1gも太ったり痩せないようにしたいと強く誓った。
滑走路を走り出すと、飛行機はあっという間に浮かび、ぐんぐんと高度を上げた。
窓の下には航空写真みたいな景色が広がっている。
フライト中は通信機器類は電源を切るようアナウンスがあったので、私は窓に張りついてただただ外を眺め続けた。
イメージ図。本当にgoogle mapみたいだった。
すっかり緊張も解け、テンションが上がってきた。
プロペラ機たのしいな!
ところが、恐怖の時間が突然やってきた。
機体が高度を下げた瞬間、無重力状態になったのだ。
ジェットコースターが急降下する時のアレだ。
胃がスワァァとなるあの感覚! 私はあれが大の苦手だった。
次のスワァァが来る前に、どうにか体を固定したい。
手足をどこかに突っ張れば、体が浮く感覚も和らぐ気がする。
出来ればこういう壁に挟まれた場所で全身を固定したい。
でもここは飛行機内。そんなSASUKEのスパイダーウォークみたいな壁はない。
背もたれに寄りかかって前の座席に手を伸ばすことで突っ張れるのでは! と思いつくも腕のリーチが足りなかった。
お行儀が悪いので足を伸ばして突っ張るわけにもいかない。
とにかく何かを掴みたい。そうだ、窓枠だ! と試みたが、窓が小さすぎた。
体を固定できない! 浮いちゃう、浮いちゃう!
こうやっている間にも、容赦なくスワァァァが全身を襲ってくる。
もうだめだ。座席と一体化してやり過ごすしか術がなかった。
人生でこんなにもSASUKEのスパイダーウォークが恋しかった時はない。
他のお客さんの様子をうかがうと、なんかみんなグーグー寝ていた。
なんで…? 局所的に私の席だけスワァァァに襲われてるの……?
そんなこんなでスワァァァとの戦いに励んでいる間に、飛行機は神津島の上空に着いたようだった。
切り立った断崖の上に滑走路が見える。こんなロケーションの滑走路初めてだ。
最高難易度の「飛行機でGo!」ならきっとこういうステージが用意されてると思う。
初めての離島
私の心配をよそに、飛行機は無事に着陸した。
青い空、青い海、迫力満点の断崖絶壁。
上空から見ただけでも、島の豊かな自然が十分にうかがえた。
これからどんな景色が待っているのだろうか。ワクワクする。
美しい自然をたくさん写真におさめておかないといけないな。
飛行機のスワァァァですっかり存在を忘れていたスマホの電源を入れた。
さっそく私は心を動かされた目の前の自然を写真に撮った。
記念すべきファーストショットは、えらい腰つきの植木だった。
空港ではこれしか撮ってなくて、今思い返すとほんのり悔しい。
この後、東京別視点ガイドの松澤さんと斎藤さん、黒曜石を研究している林さんと合流し、取材に取り組んだ。
初めての取材はとてもハードで、一瞬死を覚悟した場面もあったけど、その分思い出深く、楽しいものになったと思う。
島唯一のビアバーで、店長さんにインタビューもさせて頂いた。
他にも取材に同行して島中を回った。
思わず「ディズニーシーだ…」と声が漏れてしまった赤崎遊歩道。
多幸湾の穏やかな砂浜。
東京の名湧水57選に選ばれているというありがたいお水。
1000円のありがたいキンメダイの煮つけ定食。
車で40分走れば一周できる小さな島だけど、様々な表情があって面白い。
そして、どこも共通しているのは、穏やかで時間がゆるやかに流れていること。
これは、買い込んだお酒を両手に持って、VRをやりに島民のかたのお宅へ向かっているところ。
なぜ離島でVRを? という疑問は、穏やかな時間と共に流れていった。
2泊3日の取材は本当にあっという間だった。神津島、楽しかったな。
貴重な体験をさせてくださった東京別視点ガイドさん、取材に応じてくださった島民のかた、ありがとうございました!
↓今回の取材で、東京別視点ガイドさんがまとめた神津島の観光プラン!