クリスマスに鼻毛カッターを

 

12月上旬、彼氏とこのような話になった。

 

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己のプレゼントセンスを見せつけあう、要はふつうにプレゼント交換なんだけど、この約束でクリスマスがすごく楽しみになった。

プレゼントって貰うのも嬉しいけど、あげるほうが楽しさは上かもしれない。

相手を喜ばせたい。あっと言わせたい!

私はこの日から彼にあげるプレゼントのことで頭がいっぱいになった。

 

 

 

プレゼントを考える

 

プレゼントは何がいいだろうか。

寒いからセーターとかマフラー……? いや、ベタすぎるか。おしゃれなソックス……? ファッション系は人を選ぶから外すべきか。

本当にほしいもの、必要なものをプレゼントしたい。さらに言うと、自分では買わないようなところを攻めたい。そう、自分で3000円出して買うという発想に至らないが、あったらすごい便利じゃん! という感じでいきたい。

 

一週間ほどかけて私は最適なプレゼントを思いついた。

鼻毛カッターだ。電動の、ちょっと良いやつ。

勝ったと思う。いや、このプレゼントセンス対決、圧勝を確信した。これに敵うプレゼントを用意できるのかちょっと相手が気の毒になるぐらい。

 

もちろん鼻毛カッターに決めた理由はちゃんとある。ギャグとかじゃない。

まず、彼の鼻からは6割ぐらいの確率で鼻毛が出ている。

鼻炎気味でよく鼻をかんでいるからかもしれない。

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 鼻毛ごときで冷めるような愛は持ち合わせていないが、話していると視界に入るので気になるは気になる。

眉毛やヒゲだって同じ毛なのに、鼻毛だけは人の目をひきつける魔力を放っていると思う。

 

 

 

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1本ぐらいなら可愛げがあるけど、たまに小筆ぐらいのボリュームで飛び出しているのでびっくりする。

ところで、鼻毛を発見した時ってその場で指摘するべきなのだろうか。ちょっと気まずくなりそうでこわい。

それに指摘するだけして、後は自分でどうにかしてちょうだいなんて無責任だと思う。

処理する道具を渡してこそ優しさというものだろう。

だから鼻毛カッターをプレゼントすることに決めた。ウケ狙いとかじゃない、こういう愛の形。きっと喜んでくれるに違いない。

 

 

 

 

どの鼻毛カッターを選ぶか

 

お店へ買いに行く前に、鼻毛カッターがどういうものなのか調べておきたい。

「鼻毛 電動 カッター」で検索すると山ほど商品が出てきた。形状や機能がいろいろあって、これは選ぶのも大変そうだ。

 

 

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鼻毛をそのままにして自信を失っている男性の画像を見かけて、一気に使命感が湧き出てきた。もはや鼻毛の飛び出しは頭を抱えるほどの問題なのだ。

 

口コミやレビューを漁りまくって、2つの商品にしぼった。

やはり大手メーカーの技術を信頼したい。家電でおなじみのパナソニック製のものと、シェイバー業界で有名なフィリップス製のもの。

 

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それぞれ刃の形に特徴があって、パナソニック製のものは先端が円柱でつるっとしている。内側に電動の刃が内蔵されていて、直接肌に刃を当てることなく安全に鼻毛を処理できる。ただし、まれに鼻毛が刃に巻き込まれて痛い場合があるらしい。

フィリップス製のものは、先端ではなく側面に刃がついている。構造上安全ではあるが、人によっては刃が肌に当たることに抵抗があったり、位置的に操作が難しいと感じるようだ。

鼻の穴の大きさや形、鼻毛の長さによって使いやすいものが違うらしい。難しすぎる鼻毛カッター

 

鼻毛についても調べた。

年齢を重ねると代謝が落ち、毛の生え変わる周期が長くなるため、鼻毛が伸びてしまう。男性ホルモンは毛を太くする作用があるので、大人の男性は長くたくましい鼻毛に悩まされているそうだ。

サイトによっては、鼻毛を抜いた毛穴から雑菌が入り、その菌が脳に侵入して脳炎になり最悪死に至るみたいな物騒なことも書いてあった。

私の中でどんどん鼻毛の存在が膨れ上がっていく。

 

 

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一日中、夜は眠りにつくまで鼻毛カッターのことを考えた。

彼の鼻の穴はどういう形だったか思い出したり、鼻毛の長さに思いを馳せた。

 

 

 

 

フィリップス製に決めた

 

結局どちらにするか決まらないままヨドバシカメラへ。

売り場で実物を手にとって30分ほど悩んだ。商品を見ていると店員さんがすかさず寄ってくるはずだが、一度も話しかけられなかった。スルーしてくださった店員さんに感謝しながら、悩みに悩んで最終的にフィリップ製のものを買った。

 

 

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水しぶきが飛び散るさわやかなパッケージ

 

 

 

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決め手は本体のお手入れがしやすそうなところ。水で丸洗いできるし、刃が複雑な形じゃないので洗うのも楽そう。

 

 

 

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痛いのはかわいそうなので、毛を引っ張らないという点も良い。 

 

 

 

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眉毛や耳毛用のコームもついているので、いろいろ活用してもらいたい。

 

 

 

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写真の並びのせいで鼻毛と耳毛の同時プレイみたいになってるハンサムなおじさんもイカしていた。

 

 

 

 

 

クリスマスイブ当日

 

いよいよこの日を迎えた。ここ数日、生涯で一番鼻毛について考えた。一刻も早く渡したい。だって今も彼の鼻から毛が出てるから。私の意識をつかんで離さない存在が、まるでアピールするかのように顔を出している。

実は自信満々に選んだ鼻毛カッターだったけど、ほんの少しだけ不安にも思っていた。彼のプライドを傷つけるかもしれないとか、モラルのない彼女だと思われるかもしれないとか。でも、前日に何人かの男性に聞いてみたのだ。鼻毛カッターをプレゼントするってどうなんでしょうか? と。大丈夫だった。みんな背中を押してくれた。

自信をもって鼻毛カッターをプレゼントしよう!

そう思うと、私は待ちきれなかった。ランチを食べ終えたところで彼に切り出した。

 

「プレゼント交換、ここでしちゃう?!」

 

「…………今思い出した…………プレゼント交換……………」

 

彼の顔色が青白く染まっていくのを確認した。

実はなんとなく彼がプレゼントを忘れてくることを予想していたので、そんなにショックじゃなかった。

彼は前々日から関西へ出張していた。この日新幹線で帰ってきた足でそのまま東京駅で私と会っている。出張先にプレゼントを持っていくとは思えない。

イブの待ち合わせを決める時点で、彼が東京駅に着いてから一度帰宅してプレゼントを持ってこれるよう余裕をもった待ち合わせ場所と時間をそれとなく提案したが、ふつうに東京駅集合になった。

たぶんこの人忘れてる……! そう思っていたので、当日プレゼントがなくても驚きはなかった。むしろそれはそれで面白い展開になりそうだと思い、言わないでおいた。

私は、やらかした時の青白い顔をした彼がたまらなく好きなのだ。

 

ひとしきり顔の青白さを楽しんだあと、いよいよ私のプレゼントを渡す番になった。 

彼が紙袋からプレゼントを取り出し、ラッピング越しに中身を予想する。

 

「え~なんだろ、四角いな。なんだ~?」

 

ラッピングの包みを開放し、鼻毛カッターを目の前にした彼は言葉を飲んだ。表情もかたまっている。

さぁどうだい、これが私のプレゼントだよ! 最高でしょうに!

 

 

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 「おれ、持ってるよ」

 

 

 

持ってた。

ショックだった。彼がプレゼントを忘れてきたことよりも、すでに鼻毛カッターを持っていたことが何よりも激しくショックだった。

 

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じゃあ、持ってるやつと合わせてこの同時プレイも出来なくはないってこと?! 

いや、鼻毛カッター持ってたなら、小筆みたいのが鼻から飛び出てた日はなんだったの?! 

私は動揺が止まらなかった。

 

高島屋の落ち着いた中華のお店で、青白い顔をした男と、動揺で目をぐるぐるさせた女が向かい合っていた。はたから見ればクリスマスによくいるありふれたカップルだろう。実際はすごく神妙な空気だった。

メリークリスマス