初デートは淡くて黒かった

 

飲み会で恋愛の話になった。

「この人が好きだ! と確信する瞬間が分からない」という話題だ。

恋に落ちるということは難しいのだろうか。

人を好きになるきっかけなんてほんの些細なことだと思う。それこそたったひと言でコロっといくかもしれない。

 

そんな話をしたので、自分の恋愛はどうだったか思い返してみた。

私もそうだった。ごはんでも行きましょうと約束したあの日。

彼の何気ないひと言で恋に落ちたのを覚えている。

  

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その日は浅草に詳しい彼の案内で、浅草周辺をぶらぶら散策していた。

 

 

 

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浅草寺に行った。

そしてすぐ隣の浅草神社に、こち亀の記念碑があるのを教えてもらった。

単行本の総発行部数が1億3000万冊を突破した記念に建てられたものらしい。

ここにその記念碑を?! と驚いてしまった。

他の石碑と比べてもそれだけピカピカの質感で不思議な感じだった。

 

 

 

浅草六区は浅草らしい趣のある通りだった。

特に街灯に取り付けられた有名人の写真看板が味わい深くて良い。

欽ちゃんや寅さん、東八郎東MAX……浅草の有名人たちを順番に眺めながら歩いていると、彼がくじら料理店の前で立ち止まった。

店先の街灯にはただ「予約済」と書かれている看板がついていた。

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数ある看板の中でも予約になっているのはこの一つだけらしい。

これはビートたけしが予約したもので、生きてる内に写真を飾るのは気恥ずかしいという理由で、亡くなった後に写真を入れるそうだ。

なるほど、何気ない看板ひとつにもエピソードが詰まってるんだなぁ。

 

こんな感じで彼が細かいポイントまでガイドしてくれるので、すごくありがたかった。

そう感謝の旨を伝えたら、彼も嬉しそうにしていた。

  

 

またしばらく歩いていると彼から提案があった。

近くに良い場所があったのを思い出したらしい。

もちろん喜んでついていく。今度は何を見せてくれるんだろう。

 

 

 

 

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「ここがハッテン場ですね」

(ハッテン場が分からない人は各自調べてください)

 

 

 

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初めてハッテン場を見た感想は「黒い……」だ。

表向きはサウナらしいのだけど、看板が出てない。ドアや窓が黒いスモークガラスのため、中の様子も全く見えない。

 

 

  

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遠目から眺めているというのに、辺りに漂う異様な空気に思わず息を飲む。

初デートでハッテン場を案内されているという緊張感もすごい。

 

 

 

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その場で立ち尽くしていたら、彼が何かに気づいたようだ。

 

 

 

 

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「せっかくだから、近くにもう1軒ハッテン場があるので見てみますか」

 

 

 

 

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「せっかくだから」の温度感でハッテン場のハシゴを?!

こんな重いボディブローのような「せっかくだから」は初めてだ。

 

 

 

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彼は一切濁りのない瞳をしてそこに立っていた。

ウケ狙いではない、セクハラ的ないやらしさでもない、彼自身ハッテン場に興味があるわけでもない、完全なる無の状態で。

そこに山があるから登るように、そこにハッテン場がもう1軒あるから見に行くのだ。

私は純真な「せっかくだから」にショックを受けると同時に、胸の高鳴りを感じていた。

この人だ、と運命を感じてしまった。

 

 

 

 

 

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2軒目も黒かった。

「やっぱり黒いんですね」位しか言えなかったけど、内心ドキドキしていた。

 

こうして私はたったひと言、「せっかくだから」で恋に落ちたのだ。

案外、ハートに刺さるのってロマンチックな言葉とは限らないのだと思う。

 

 

 

その後

彼とはお付き合いすることになって色々な場所へ遊びにいった。

ディズニーシーのキラキラした海の前で、水面のようにきれいな瞳をした彼が、史上最も残酷な拷問器具「ファラリスの雄牛」の解説を始めた時は、ドキドキしてまたときめいてしまった。

「ここでそれを?!」というシチュエーションに私は弱いのかもしれない。

 

 

 

 

おわり