清々しい秋晴れの週末、私たちは府中にいた。
競馬をやりに、
府中にある東京競馬場にやって来た。
今までわたしは競馬のことをなにも知らずに生きてきた。
前々から興味はあったけど、システムから賭け方まで全部難しそうで手を出せなかった。
それに競馬場ってすごく怖そうじゃないか。
ひとりで行くには不安すぎる。
そこで今回、頼れる友人たちと一緒に競馬場へやってきたのだ。
競馬場によく来るという友人A、わたしと同じく競馬初心者の友人B。
心底安心できるメンバーだ。
今日はみんなで競馬を楽しんでみたい。
待ち合わせより少し早く着いたので、入場口の周辺をうろついてみた。
遊園地みたいな案内板。
見どころがたくさん書いてある。
競馬場ってこんなにアトラクションがあるのか。
今日は遊んでふれて楽しむぞ!
看板の前で決意をみなぎらせていたら、偶然、友人Bもそこにいた。
Bも初めての競馬だ。同じく決意をみなぎらせていたに違いない。
入口前で当たりペンというものを発見。
当然、初心者のわたしたちは釘付けだ。
これで億万長者になれるじゃん! と1秒も悩まずBは当たりペンを買った。
ちなみに今日のBの所持金は1700円だと言う。そのうち100円をここで使っていた。まだレースが始まってもいないのにヒリヒリする展開だ。
どうにかこの当たりペンで億万長者になって帰ってもらいたい。
私は同じお店で「当たり屋さん」という新聞を買った。
スリリングなネーミングだが、売店のおかあさんが「これの通りに馬が勝つよ」と断言していたので買った。
これの通りに馬が勝つなら買うっきゃない。
友人Aと合流するべく、ふたりで待ち合わせ場所へ向かう。
道中、穏やかなテラスを見かけた。
ここって本当に競馬場……? 不思議な気持ち。
建物のエントランスに入ると、わたしたちは驚きのあまり声を上げてしまった。
だってここってあまりにも……サンリオピューロランドじゃん!
広くてきれいでシュッとしてて、イメージの競馬場とかけ離れすぎている。
これが競馬場というものなの?! 早くも競馬場の良さに震えながら下の階へ降りた。
うそ、空気が変わった……!
無機質な券売機が連なり、手前のモニターには暗号のような数字が映し出され、それを殺気立った大人たちが無言で見つめている。
兵士だ。この人たちは出陣前の兵士。これから戦いが始まろうとしている。忘れてはいけない。ここにいる全員、生死(お金)をかけているのだ。
浮かれてもいられないぞ……張り詰めた空気に思わず息を飲んだ。
パドック前で友人Aと合流し、そのままパドックを見学することに。
やったー! 馬だー!! いざ本物の馬を目の前にすると、ものすごく浮かれてしまいますね!
パドックではレース前の馬の状態を見るらしい。
馬のしっぽが元気よく持ち上がっていたり、足取りが軽いと好調とのことだ。
たしかに初心者でも分かるぐらい馬に個性があって面白い。
それぞれ推し馬ができたところでいよいよ馬券を買う。
Aに教わりながらマークシートを塗りつぶしていく。
ちなみに入口で買った「当たりペン」と「当たり屋さん」をAに自慢したところ、
「それ買う人いるんだ」
とのことだった。買った人がここに2人もいるのに。
券売機。知らない機械って緊張して訳が分からなくなる。
マークシートを挿入して操作をするのだけど、エラーが出ると機械と機械の間がパカッと開いてそこからナマの係員さんが出てきて教えてくれる。
急に人間が出てくると驚いて頭が真っ白になるので、操作を間違えないようにしたい。
建物を出てスタンドへ。広い! 果てしない!
土地ーー! と叫びたくなる。
背後を振り返ると、びっしり観客だらけで大変なことになっていた。
人々ーー!!
キョロキョロしているうちにファンファーレが鳴った。
競馬を知らない私でも聞き覚えのあるあのファンファーレ。
ああ! いよいよ始まる!
と思っていたら、もう走りだしていた。
競馬って早い。馬券の発売締切もすぐだし、買えたと思ったら馬は走りだしている。うかうかしてられない。
大きなモニターの中で、自分の賭けた馬が今どうなってるのか必死に探した。
今どうなってるの?! 順位は?!
そうこうしているうちに馬たちは最後の直線へ。
すると観客席から轟音が鳴りだした。人々の歓声と怒号が入り交じって嵐が巻き起こっている。すごい音だ、飲み込まれる!
レースはあっという間に終わった。
AとBの顔を見ると、恍惚としていた。
まさか当たったのかと思ったら大ハズレだったらしい。
今どういう気持ちなのか尋ねると「気持ちいい~~!」とのことだった。負けたのに気持ちいい?!
確かにお風呂あがりみたいにホカホカの顔をしている。
競馬は負けても気持ちがいい。これは大発見だ。
私の買った馬券は300円が450円になって戻ってきた。
少ないけど当たってしまった。うれしい。ちなみに「当たり屋さん」に書かれていた通りに賭けていた。 私はギャンブラーとしての度胸がない。
次のレースはお酒を飲みながら芝生に座って待つことにした。
芝生、平和ですごくいい。さっきまでの興奮がウソのようだ。穏やかなお花見みたいで楽しい。今度はお弁当を持って来たい。
それから最終レースまでみっちり賭けて、Aは7000円のマイナス。
気持ちよくなりすぎたのか、サウナで交互浴した後と同じ顔になっていた。ほっかほか。
Bは所持金が1700円から0円になりかけ、当たりペンにキレ散らかしていたが、最終レースで巻き返して1200円に復活! 本当によかった。
私はマイナス1000円ぐらい。1000円でこんなに楽しく興奮できて、競馬ってお得だなと心底思った。いっぱい感動しちゃった。
馬をおさわりしたい
敷地内に馬小屋があり、実際に馬と会えたり触れあえたりするらしい。
みんなでレースの合間に行ってみた。
いた! ナマの馬だ。部屋着みたいの着てる。かわいい。
まつ毛まで見える距離でうれしい。かわいい。
そして、ドキドキしながらふれあいコーナーへ
ミニチュアホースのラッキー号。なんて小さくて愛らしいの!
指先から命を感じる……さっきまで猛スピードで走ってたあの生き物を今さわっている。競馬場で馬を触れるとは。これはすごいことだ。
命を感じ感動していたところの隣に、おもいっきり無機質な馬がいておもしろかった。
馬の部屋にもお邪魔させてもらった。
じゅうたんがふかふかで良いお部屋。
お隣の馬と目が合った。
馬は群れで暮らす生き物なので、馬同士が見えるようにしておくと安心するらしい。
馬とふれあいができて、ときめきが止まらなかった。
大人しくて穏やかな顔をしてるけど、走りだしたら時速70kmも出るなんてちょっと信じられない。顔だけ見たら優しくママチャリぐらいの速さで走りそうなのに。馬ってすごいね。
UMAJOの一員になりたい
ケイバを楽しむ女性たちのことをUMAJOというらしい。
わたしも立派なUMAJOになりたいので、UMAJOが集まる「UMAJO SPOT」へ行ってみることにした。
入口にあったかわいいぬいぐるみ。口の位置。ニンジンの刺さり具合がたまらない。
バラもこんにゃくの花ぐらいデカくておもしろい。
UMAJO SPOTではカフェで休憩できたり、グッズを購入できるらしい。
ファンシーなグッズコーナーにわたしの中のUMAJOが騒ぎ出した。これはかわいいぞ。
イラストの馬とリアルな馬が混在しているので、不思議な気持ちにもなる。
これは巨大UMAJOせんべいと、親子の馬が混在する壁。本当にいろいろなかわいいが混ざっている。
テイクアウトで馬のロールケーキを買ってみた。恐ろしくかわいい。
ロールケーキを食べていたらとても優雅な気持ちでレースを見れた。
無事わたしもUMAJOの一員になれたに違いない。
食べ物といえば、友人Aおすすめの戸松の唐揚げも食べた。
しっかりめの味付けでごつごつした衣がおいしい。お酒がすすむ。
かわいいロールケーキで優雅になれて、ごりごりのから揚げで酔っぱらえる。
競馬場って何者にでもなれる場所なのだな。
一日ありがとうございました
競馬場はすばらしく楽しい場所だった。全然こわくなんてなかった。
まだまだ分からないことはあるけど、また必ず行きたい。
まずはレース中の野次を覚えたいと思った。
まくれーーーっ!
させーーーーっ!
などを適切なポイントで叫んでみたい。あれは気持ち良さそうだ。
ありがとうございました!